2011年5月30日月曜日

「シアリス」模造薬、ネットで横行


性的不能治療薬「シアリス」の模造薬が、奈良県内にもまん延しつつある。インターネットでは、悩む男性につけ込むようなうたい文句が並び、誰でも手軽に購入できるためだ。薬効に疑問があっても、ネット上の「個人輸入は自由」との原則により、取り締まることができない状況。県は26日、県内で死亡した50歳代の男性方から模造薬4錠が見つかったと発表し、こうした模造薬の使用に注意を呼びかけている。(田畑清二)
「世界でもっとも安全、人気がある薬」「効果が早く薬効も長い」――。あるサイトではこんな宣伝文句と共に、「シアリス50ミリ・グラム」という薬が10錠約3000円で販売されていた。「1、2日後でも効果があるようです」「友達も病みつきになっています」などという利用者コメントが寄せられているサイトもあった。
シアリスは、国内では日本新薬が発売し、有効成分の量別に5、10、20ミリ・グラムの3種類が1錠2100円前後までで薬局などで販売されている。「シアリス50ミリ・グラム」は偽物だ。インターネットでは、一見、効果が高そうな「200ミリ・グラム」をうたったものもあった。こうしたサイトには「サプリメントはお客さまの自己責任にてお使いいただけますよう、よろしくお願いいたします」と記されていた。
この日、県庁で記者会見した県薬務課の辻元康人主幹は「医師の処方を受けないで飲むのは危険な行為」と注意を呼びかけた。
同課などによると、死亡した男性の衣服から見つかった模造薬「シアリス50」からは、シアリスではなく、別の治療薬「バイアグラ」の成分が、正規品の2倍以上の118ミリ・グラムも検出された。
男性の購入ルートは不明だが、性的不能治療薬の発売元の製薬会社4社が2009年12月、ネット販売の薬を調査したところ、約6割が偽造品だったという。発売元の啓発活動にもかかわらず、ネットでは今でも模造薬が販売され続けている。性的な治療薬であるため、人知れず手に入れたいという思いや、価格の安さなどが理由とみられる。
今回の問題を受け、県は輸入代行業者数社に警告のメールを送信した。1割程度はサイトを閉鎖したが、中には電話もかからないサイトもあり、販売する側を取り締まるのは極めて困難な状況だ。
こうした治療薬に詳しい川崎医科大学の永井敦教授(泌尿器科)は警告する。「模造薬には他の成分や有害な物質を含む場合がある。過去には血糖値が下がってショック死した人もおり、絶対に手を出してはいけない」
(2011年5月27日 読売新聞)

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